江戸時代の街並みが思い起こされる、岡山県矢掛町旧山陽道の宿場町。
そこに立ち並ぶ古民家の一軒が、ミニギャラリーカフェ「ポン ムヴァン」です。
週末になると、全国各地からライダーたちが訪れる人気のカフェが、2023年8月末をもって、閉店となりました。
この記事は、オーナーのポンさんこと津尾美寿枝(つおみずえ)さんと、チーフこと津尾和歌子(つおわかこ)さんに、2021年1月に聞いたお話をまとめたものです。
書いている私・こばんも、「ポン ムヴァン」によく訪れていました。
「ポンさんとチーフのこれからの人生を応援したい。あたたかいお人柄や、カフェオープンの過程や想いを、記事として残して、ポン ムヴァンを忘れずにいてほしい」という気持ちで、今回、記事化させてもらいました。
バイクとの出会いが織りなす人生について、ぜひ読んでみてください。
Contents
バイクと無縁の生活から、全国のライダーが集うカフェへ
ポン ムヴァンの建物は、明治15年築。レトロな和の雰囲気が心地よい空間です。
入口には、ポンさんのモンキーバイクがあり、まわりにはライダーたちの写真がずらり。
なんと、カフェオープン前は、ポンさんもチーフも、バイクと無縁の生活を送っていたそう。
もともと、ポン ムヴァンがあった空間は、ポンさんの夫と義理のお父さんが歯科医院を経営していたのだとか。
歯科医院を畳んだ後、一部改装を行い、2008年9月にオープンしたのがポン ムヴァンです。
それも、当初はカフェではなく、古民具を並べるギャラリーにするつもりでしたが、ご近所さんの「何かするならお茶くらい出してみたら」の一言で、カフェに。
その後さらに、飲食店で働いた経験のないふたりに、「ケーキを出してみたら」の声が・・・。
ポンさんお手製のシフォンケーキと、チーフお手製のチーズケーキが定番スイーツとなりました。
「周りに言われて、波にのるように、なんとなくこんな形のカフェになりました」とポンさんは当時を振り返ります。
カフェに訪れたライダーのブログがきっかけで、北海道から沖縄まで全国から多くのライダーが訪れるようになりました。
お客さんの半分がライダーだったそうです。
カフェをオープンしてからバイクの免許取得
ポンさんもチーフも、カフェを始めてから、バイクの免許を取得しました。
カフェ入口にあるモンキーは、ポンさんの愛車です。
最初はオブジェのつもりでしたが、訪れるライダーたちの「どうせならプレートつけんと」という声から、ナンバープレートを取得。
その後、教習所に通い63歳で小型限定普通二輪免許も取得しました!
コロナ禍以降はお休みですが、北海道、山口県の角島、四国のカルスト台地やしまなみ海道などを、これまでひとりで走ったことがあるそうです!
モンキーを車に乗せて行き、絶景道を、時速30km、40kmくらいのスピードで走るのだとか。
チーフはというと、お客さんのアドバイスで中型免許を取得し、ドラッグスター250に乗っていたものの、1年で手放しています。
けれど、これまで7,000台以上のバイクに「乗って」きました!
ライダー客の愛車にまたがり、写真を撮る台数で世界記録に挑戦していたのです。
こちらもまたお客さんからの「やってみたらええが」という声がきっかけでスタートしたそう。
ポン ムヴァンのインスタグラムにはたくさんのライダーとの写真が掲載されていますよ。
ポン ムヴァンの名前の由来
優しい響きがふたりの人柄を表しているような店名「ポン ムヴァン」。
由来を聞くと、
「近くの小田川に以前、水かさが増すと橋板が外れて流れる構造の木製の橋『流れ橋』が掛かっていたんです。大好きな風景でした。
その橋を、フランス語で『ポン ムヴァン』というと、教えてもらったんです」
とポンさん。
まさか歯科医院だった場所で、カフェを開くことになるとは。
日本全国からライダーたちが集い、自分もバイクの免許を取得するとは。
人生はわからないものです。
まるで小田川の穏やかな流れのように、軽やかな生き方。
お話を聞いて、予想できない出会いと経験こそ、人生の醍醐味だなぁと感じました。
おわりに
周りの人の提案に、ひょいっと乗る身軽さが素敵ですよね。
私もこんなふうにバイクとともに軽やかに生きたいな、とお話を聞いた日から思っています。
レトロな古民家カフェで食べる、ポンさんの自家製柚子茶やシフォンケーキ、チーフのチーズケーキ、最高でした。
親身に接してくださり、写真もたくさん撮ってもらい、思い出がいっぱいのポン ムヴァン。
ポンさん、チーフ、これからの人生もおふたりらしく進んでいってくださいね!